STEAM教育ってなに?なぜ注目されているの?
- やまよせ代表
- 3月23日
- 読了時間: 7分
更新日:4月6日
保育・教育コラム | Yamayose's eye
いしかわ保育・教育アドバイザーであり、Weskii Lab代表を務める山寄(やまよせ)が、「仕事と子育ての両立」や「AI時代の保育・教育」といったテーマについて、さまざまな視点から自身の想いや考えをコラムとして発信します。
また、山寄自身も約10年間、ヨーロッパ諸国やアメリカシリコンバレーに海外赴任し、さまざまな育児・教育制度のもとで、幼児期から小学生期までの子育てを経験してきました。そうした実体験から得た知見も交えながら、子育て世代の皆さまにとって少しでも参考になる情報をお届けできれば幸いです。
さらに、セミナーや講演会などを通じた社会貢献活動にも取り組んでおりますので、お気軽にお声かけください。
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STEAM教育とは何か
STEAM(スティーム)教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術・教養)、Mathematics(数学)の5つの領域を横断しながら学ぶ教育の考え方です。単に理数系の知識を増やすことが目的ではなく、それぞれの分野を組み合わせて、現実の課題に向き合い、「問題発見力」と「課題解決力」を身に着け、今後のIT社会に順応した競争力のある人材に育てていくための教育方法です。
ただ、こうした一般的な説明を聞いても、STEAM教育の本質がすぐに腑に落ちる人はそれほど多くないかもしれません。そこで本コラムでは、私自身の経験や考えも踏まえながら、主に次の3つの視点から「STEAM教育」をわかりやすく整理していきます。
・STEAM教育はどのように活用されるのか
・なぜ今、STEAM教育が注目を浴びているのか
・STEAM発祥ともいえるシリコンバレー流STEAM教育とは何か
STEAM教育はどのように活用されるのか
もともとは、Science、Technology、Engineering、Mathematicsの4領域を重視する「STEM(ステム)教育」が先に広まりました。そこにArtsが加わってSTEAM教育になった背景には、これからの社会では、知識や技術だけではなく、デザイン、物語性、感性、表現、コミュニケーション、価値づけまで含む広い概念がますます重要になるという考えがあります。たとえば、優れた技術を持っていても、それを人に伝えられなければ価値は広がりません。データを分析できても、それをどのような形で社会に役立てるかという想像力がなければ、真の課題解決にはつながりません。STEAM教育とは、この「技術」と「創造性」をつなぐ教育だと言えます。
従来の教育では、教科ごとに学ぶ内容が分かれていることが一般的でした。理科は理科、算数は算数というように、それぞれを別々に学ぶ形です。もちろん基礎を身につけるうえでは重要な方法ですが、実社会の課題はそのように分かれていません。たとえば「地域の子どもたちが安全に放課後を過ごせる仕組みを考える」というテーマがあったとします。この課題を考えるには、安全性や子どもの行動特性を理解する科学的視点、ICTやアプリを活用する技術、送迎ルートや運営の仕組みを設計する工学的視点、費用や人数を考える数学的視点、さらに保護者や地域に伝わるデザインやプレゼンテーションの力も必要です。このように、学んだ知識を分野横断で使いながら、現実の問題を解く力を育てるのがSTEAM教育です。
STEAM教育の大きな特徴の一つは、「正解が一つではない問い」に向き合うことです。従来型の学習では、決められた問題に対して、正しい答えを早く正確に出す力が重視される場面が多くありました。一方でSTEAM教育では、「どうすればもっと使いやすい道具になるか」「地域の困りごとをどう解決できるか」「環境にやさしい商品とは何か」といった、答えが一つに定まらないテーマを扱います。そのため、子どもたちは調べる、考える、試す、失敗する、改善する、発表するというプロセスを通して学びます。ここで大切なのは、最初から正解にたどり着くことではなく、“仮説と試行錯誤を重ねながら自分なりの答えを作っていく”過程です。この過程こそが、知識を暗記するだけでは得られない深い学びにつながります。
なぜ今、STEAM教育が注目を浴びているのか
STEAM教育が今これほど注目されている理由は、社会そのものが大きく変化しているからです。AI、ロボティクス、データ活用、グローバル化、環境問題など、私たちを取り巻く環境はこれまで以上に速く、複雑に変わっていきます。子どもたちは将来、今はまだ存在していない仕事や、前例のない課題に向き合うことになります。そのとき必要なのは、記憶力や決められた手順を正確になぞる力だけではありません。未知の課題に対して、自ら問いを立て、情報を集め、考え、試し、周囲と協力しながら新しい価値を生み出していく力です。STEAM教育は、そうした未来に必要な資質を育てる教育として注目されています。
また、STEAM教育は理数系が得意な子だけのものではありません。多様性が尊重される現代社会において、多様な子どもが自分の得意を発揮できる教育です。数字や実験が好きな子もいれば、絵やデザインが得意な子、人前で話すのが得意な子、アイデアを考えるのが好きな子もいます。STEAM教育では、それぞれの強みを持ち寄り、一つの課題に向き合うことができます。そのため、子どもたちは「勉強ができる・できない」という一面的な評価ではなく、「自分にはこういう強みがある」「自分の得意が誰かの役に立つ」と実感しやすくなります。これは、自己肯定感や主体性を育てるうえでも大きな意味があります。このように、STEAM教育では複数の学びが一つのテーマの中で自然につながっていきます。
STEAM発祥ともいえる、シリコンバレー流STEAM教育とは
STEAM教育を考えるうえで、シリコンバレー的な発想は非常に示唆に富んでいます。ここでいう「シリコンバレー流STEAM教育」とは、単にITに強い子を育てる教育ではありません。むしろテクノロジーを使って社会の課題を解決し、新しい価値を生み出せる人を育てる教育です。シリコンバレーでは、知識そのものよりも、何を問い、何を作り、どんな価値を社会に返せるかが重視されます。そのため、シリコンバレー流STEAM教育には、いくつかの特徴があります。
まず一つ目は、“課題起点で学ぶ”ことです。最初に教科があるのではなく、最初に「解きたい課題」や「実現したい未来」があります。その課題に向き合う過程で、必要な科学、技術、数学、デザインなどを学んでいく。この順番が重要なのです。つまり、「勉強してから使う」のではなく、「使いたいから学ぶ」のです。
二つ目は、失敗を前提にした試作と改善の文化です。シリコンバレーでは、最初から完璧な答えを出すことよりも、まず作ってみて、試してみて、失敗し、改善を重ねることが重視されます。教育に置き換えれば、子どもが最初から正解をだせなくてもよいしそのために時間を費やすことを避けるべき、むしろ試行錯誤そのものに価値があるという考え方です。この姿勢は、日本の「間違えないこと」を重視しがちな学びとは対照的であり、STEAM教育の本質を理解するうえで非常に重要です。
三つ目は、ユーザー視点、デザイン思考的な視点を大切にすることです。デザイン思考とは、ユーザー(人)の困りごとやニーズを起点として新しい価値をデザインする発想法です。どんなに高度な技術でも、使う人にとって意味がなければ価値になりません。だからこそ、「誰のためにつくるのか」「相手は何に困っているのか」「どうすれば使いやすく愛されるのか」という視点が重視されます。ここに”Arts”の役割があります。Artsとは完成や表現だけでなく、相手を理解し、共感し、価値として届ける力でもあるのです。
つまり、シリコンバレー流STEAM教育の本質は、テクノロジー教育ではなく、価値創造教育にあります。一方日本で行われているSTEAM教育の多くは、テクノロジーが使える人材を育成することを目的としているように私は考えます。プログラミングやロボットなどはそのための手段であり、目的ではありません。大切なのは、子どもが自分のアイデアを形にし、それを他者や社会のために役立てる経験を積むことです。
まとめ
教育現場でSTEAM教育を進める際に大切なのは、立派な教材や高度なプログラミング環境だけではありません。もちろんタブレットやロボット教材は有効ですが、本質はそこではなく、子どもが「なぜ?」「どうしたら?」と考え、試し、表現できる環境があるかどうかです。
紙とハサミで模型をつくることもSTEAMですし、身近な地域課題をテーマにアイデアを出し合うこともSTEAMです。重要なのは、教科を超えて考え、現実と結びつけ、自分の手で価値を生み出す体験です。また、自由度が高い学びだからこそ、子ども任せにするのではなく、大人が適切な問いを設計し、伴奏することも必要です。放任ではなく、子どもの探求を支える教育なのです。
これからの時代に必要なのは、正解を早く出せる人だけではありません。正解のない問いに向き合い、自分なりの答えをつくり、他者とともに未来を形にできる人です。STEAM教育は、その土台を育てる教育です。だからこそ、単なる理数教育の強化ではなく、「子どもが社会の担い手として、自ら未来をつくっていく力を育む教育」として、大きな意味を持っているのです。
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